みなさん読書はしていますか。
私は特に読書好きという訳ではないのですが好きな作家さんの小説をたまに読みます。
私の好きな作家は好きな人も多いと思いますが伊坂幸太郎です。
東北大学卒業で仙台在住の為、仙台が舞台になる作品も多く、東北出身の私には親しみを感じることもあります。
しかしそれ以上に、あの独特と言える伊坂ワールドにはまってしまいます。
そんな伊坂作品ですが、ほとんどの作品を読んだのですがまだ読んでない作品もあります。
今回はまだ読んだことのなかった「残り全部バケーション」を読んでみたので書評してみたいと思います。
5つの話から成る物語
この作品は第1章から第5章まであります。
裏稼業の下請けをしている溝口がその相方と周りの人間を巻き込みながら話が進みます。
速い人だと1日で読める量ですが、1章ずつ独立した内容なので時間が空いた時に少しずつ読むことも出来る点が良いです。
初め読んだとき、5つの独立した話を集めた短編集なのかと思いましたが、そこはやはり伊坂作品、きっちりとつながっていました。
伊坂ワールドの1つは、いろいろな所に伏線をはり、それが最後にはつながっているという魅力があります。
本作品も何となくバラバラな事が最終的にはそうだったのかと納得のいく伊坂ワールドの魅力を持った作品の1つです。
第4章 「小さな兵隊」が秀作
伊坂作品は大きく分けると3つに分類出来ます。
① デビュー作「オーデュボンの祈り」のようなシュールな作品
② 「陽気なギャングが地球を回す」のようなはちゃめちゃドタバタ劇
③ 「砂漠」「重力ピエロ」のようなじんわりと何かを感じる作品
本作品は全体で見ると、②のようなはちゃめちゃドタバタ劇ですが、その中にも③のようなじんわりと何かを感じる作品が入っています。
第4章の「小さな兵隊」がそのじんわりとくる作品です。
第1章のあっさりとした親子関係に対比し、第4章では親子関係の愛について考えさせられます。
とても短い内容ですが独立した話としても成り立つ秀作だと思います。
名言を楽しむ
伊坂作品の特徴の一つに名言があります。
もちろん本作品にも名言があります。
「今日、仕事をやめたばかりなんだ」「明日から、もう俺の人生、残り全部、バケーションみたいなもんだし」
「問題児に答え児とは、鋭い意見だな」
まだまだありますが、名言は本作を読んで人それぞれ楽しむのが良いかと思います。
憎めないキャラクター
陽気なギャングシリーズの響野のように悪い事をしているのになぜか憎めないのが本作品の中心人物・溝口です。
特に第5章ではその魅力を発揮します。
溝口は果たして悪い奴なのか良い奴なのか、そんなことも楽しめる作品です。
伊坂ワールドの詰まった良い作品です
最後の結末に納得のいかない読者もいるのではないかと思います。
私ももう少し踏み込んでも良かったのではないかと思いますが、どう捉えるかは読者さん次第ですね。
しかしそれ以上に伊坂作品の魅力が詰まった作品だと思います。
所々に伏線があり最後につながる所、ドタバタ劇でありながらホッとさせる所、名言がある所、憎めないキャラクターの存在など伊坂ワールド全開の作品です。
とても読みやすい作品でもっと早く読めば良かったと思いました。
もちろんこの本を読んだことのない人におすすめなのですが、特に伊坂作品の魅力がたくさん詰まっている上に読みやすい作品でもあるので、今まで一度も伊坂幸太郎の作品を読んだことのない人に読んでもらいたいです。
きっと伊坂ワールドの魅力に取りつかれ、他の伊坂作品を読みたくなると思いますよ。