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東海大学駅伝監督・両角速「前に進む力」を読んで

本屋のスポーツ関係の棚を見ていたら、東海大学駅伝監督・両角速の「前に進む力」という本が置いてあったので、購入して読んでみました。

両角監督は、当時無名だった長野・佐久長聖高校を駅伝日本一に導き、その後就任した東海大学では、今年2019年に箱根駅伝で悲願の初優勝を果たしました。

私自身は今年の箱根駅伝優勝で、両角監督の事を知り、高校、そして大学で優勝に導いたその指導法に興味がありました。

そうした中で出版された本だったので、普段は図書館で済ましたりするところを今回は迷わず即買いしました。

「悲願」「奮闘」「再起」「挑戦」「世界」

内容は「悲願」「奮闘」「再起」「挑戦」「世界」の5章で構成されています。

初めの「悲願」では、初優勝した箱根駅伝を振り返ります。

もちろん優勝まで順風満帆だったわけではなく、佐久長聖時代はゼロから組織を作り上げ、東海大学時代には就任2年目に箱根駅伝予選会落ちを経験、40年連続出場を途切れさすなどの苦い思いを「奮闘」で語っています。

その苦悩している監督を高校時代の監督仲間が、「男にしてやる」と送り込んだのが、いわゆる東海大学・黄金世代と呼ばれる選手達でした。

その選手達が今回の箱根駅伝優勝の立役者となります。

この辺のことが「再起」「挑戦」で描かれています。

今回の優勝はもちろん選手自身の努力やチームの指導法が良かったということもあったかと思います。しかし、同時に監督自身が日頃大事にしている人間力が結びついたことも大きかったのではないかと感じる内容でした。

そして「世界」では、文字通り世界を見据えて、その思いを語っています。

両角監督の人間力

私が両角監督に興味を持ったのは単に私の母校・東海大学を箱根駅伝で優勝に導いたというだけではありません。

監督の基本的考え方に共感したからです。

1つは、学生に人間的成長を促し、みんなから応援してもらえるような選手になるよう指導していること。

2つめは、勝利至上主義ではなく、大学スポーツは教育の一環であると考えている点。

そして3つめは、駅伝は世界へ羽ばたく通過点と考えている点。

大きくこの3点に共感しました。

いつか1500mで活躍する日本人に夢見て

特に3つめの駅伝は世界へ羽ばたく通過点という考え方には期待しています。

現状の陸上長距離界をみると、箱根駅伝が人気の頂点になっており、その後の社会人・実業団のレースはほとんど話題になりません。

もともと駅伝という種目は日本独自のもので、箱根駅伝も世界で活躍する選手を育てるために創設されました。

しかし、メディアは箱根駅伝ばかりに注目するため、箱根駅伝を最終目的にする選手も多くいます。

もちろん、そのような考え方も間違いではありませんが、中にはオリンピックなど世界を目指す選手もいます。

その為には、駅伝に特化した練習ではなく、あくまで世界を目指す中での駅伝練習でなければなりません。

そういう点で、駅伝に特化したチーム作りをしている大学がある中、世界を見据えてスピード練習に励む東海大学は、母校ということを抜きに応援したくなります。

現に東海大学には館澤亨次という学生ながら日本選手権1500m・2連覇中の選手がいますし、実際、箱根を走っても、結果を出します。

また今年入学したばかりの1年生・飯澤千翔選手は、その館澤選手を1500mで2度破っています。

その他、3000m障害では阪口竜平選手が、1500mの館澤選手と共にユニバーシアード日本代表に選ばれています。

これが駅伝だけに特化していると、中距離に向いている才能を見逃してしまう可能性もあります。

そういう意味で、スピード練習は、選手にとっても、ファンにとっても陸上競技の幅を広げてくれます。

ただ実際、800m、1500mの中距離は他の種目にも増して世界との実力差があり、現状ではオリンピック、世界陸上で、この種目の日本人出場は難しいのが実情です。

それでもいつか、この練習、この思いが実を結び、日本人選手がこの種目で活躍すること期待します。

そしてそれを実現させてくれるのではないかと思うのが、両角監督の考え方なのです。

多様な指導法を学ぶ

昔ながらの根性論、科学を取り入れた理論で指導する方法、褒めて褒めて伸ばす方法など、スポーツにしろ、仕事にしろ、指導法には様々な方法があります。

今年の箱根駅伝の3強で言うなら、青学の原監督は選手を乗せて雰囲気で力を出させるタイプ、東洋大の酒井監督は、理論で力を発揮させるタイプ、そして東海大の両角監督は選手と真摯に向き合って力を出させる真面目なタイプに個人的には感じています。

これは、あくまで私個人の感想であって、本当のところは分かりませんが。

もちろん、どの方法が良くて、どの方法が悪いということはありません。

当然、選手の性格によっても合う、合わないがありますからね。

そういう意味で、様々なタイプの指導法を勉強するのも悪くはないのかなと思います。

それは、色々な指導法、考え方を学ぶことは、自分自身の考え方に幅を持たせることに繋がりますからね。

おわりに

この本は両角監督の指導理念が分かる内容となっています。

それと同時に、村澤明伸選手(現・日清食品)、金子晃裕選手(現・コモディイイダ)など多くの歴代の教え子のエピソードも載っているので、単に陸上ファンの読み物としても面白かったです。

なので、高校、大学駅伝優勝監督の考え方を学びたい人、また、単に駅伝が好きという人も機会があれば、是非一度読んでみて下さい。